第2回 「雨音と窓辺」
吾輩は猫である。名はキキ猫。
雨の日は退屈――と、ヒトはよく口にする。
だが、吾輩に言わせれば、それは大いなる見落としにゃ。
外がしとしとと濡れる音。
窓を打つ雨粒がつくる小さなリズム。
天からの無数の指先が、そっと世界をなぞるような優しさを持っておるのだ。
吾輩は、窓辺のクッションに身を沈める。
体はあたたかな毛布の上に、鼻先だけほんの少し外に向けて。
ひんやりとした空気と、ふんわりとした湿り気が、鼻をくすぐるのが心地よい。
向こうの軒下では、すずめが羽をふるわせておる。
木々はしっとりと深く色を増し、草の香りが部屋の奥にまで届く。
――雨は、景色の音量を下げるかわりに、匂いや気配を強くしてくれるのだ。
主(あるじ)は、ホットミルクを淹れて読書を始めた。
いつものコーヒーではなく、今日はミルク。
きっとこの雨が、少しだけ“やさしい時間”をくれたのだろう。
吾輩もまどろむ。
この雨音の子守唄は、実に質がよい。
“静けさ”は、時に最高の贅沢なのだと、猫は昔から知っておる。
☔️キキ猫の小さな哲学
「雨はにゃ、世界を磨く音。きれいにしたい気持ちは、音に出るものにゃ。」