🐾 猫が語る、日常の小さな幸せ

🐾 猫が語る、日常の小さな幸せ④

第4回 おひるねと夢の境界線

吾輩は猫である。名はキキ猫。
昼下がりの時間ほど、心地よきものはない。

とくに、午前のあわただしさを過ぎた頃――
主(あるじ)の足音も静まり、空気がややとろけるような感覚になる。
そうなれば、吾輩の出番である。
お気に入りのクッションに沈み、ゆっくりと目を閉じる。

おひるねとは、ただの眠りではない。
それは“夢と現の境界線”をたゆたう旅のようなものにゃ。

夢のはじまりには、部屋の匂いが残っている。
主の気配、台所から立ちのぼるお茶の湯気、外をかける風の音。
だがそれが、ふわりとほどけ、やがて色と形を変えていく。

吾輩は夢の中で、空を飛ぶこともあれば、魚と話すこともある。
ときには子猫だった頃の草の匂いが甦る。
けれど、どこかに“本当の世界”の温もりが残っているのだ。

おひるねとは、ただ眠るのではない。
“心の奥にある静けさ”を思い出すための、神聖な儀式である。

そして、目を覚ませば――
主が横に腰を下ろしている。
ひと撫でされ、吾輩は安心して、またまどろむ。


😴 キキ猫の小さな哲学

「おひるねは、現(うつつ)と夢の間に浮かぶ舟。静かな幸せは、そこにあるにゃ。」