第7回 紙袋と段ボールの冒険
吾輩は猫である。名はキキ猫。
世にある高級なおもちゃや華やかなキャットタワーより、
吾輩が心躍るもの――それは、紙袋と段ボールである。
ヒトが買い物から戻ってくると、たいてい袋がある。
その紙袋を、吾輩はただの入れ物とは思わぬ。
それは新たなる洞窟であり、秘密基地であり、冒険のはじまりなのだ。
袋の中に入って、じっと息をひそめる。
主(あるじ)が「どこ行ったの?」と探し出す、その気配を感じながら、
吾輩は静かに耳をすませる。
それだけで、この世界は“遊び”に満ちるのである。
段ボール箱は、さらに奥深い。
サイズの違いや、ふちのかじり心地、閉じこもる安心感。
ときに城となり、ときに船となり、ときにただの寝床となる。
だが、ヒトはこう言う。
「なんでそんなボロ箱が好きなの?」と。
――分かっておらぬにゃ。
紙と箱には、無限の想像力を引き出す力があるのだ。
その中にいると、世界が少し違って見える。
外の音が遠くなり、光が和らぎ、思考が深くなる。
紙袋と段ボールの中には、“小さな宇宙”が広がっている。
吾輩にとっての冒険とは、遠くへ行くことではない。
目の前にある、ありふれた何かが、ふと輝きをもつ瞬間。
それが「ちいさな幸せ」なのだ。
📦 キキ猫の小さな哲学
「にゃんとも言えぬ不思議な魅力、それが袋と箱にゃ。今日も新たな発見が待っておるぞ。」