第3話 ヒトのおやつ時間、なぜ隠す?
吾輩は猫である。名はキキ猫。
本日は、主(あるじ)の“こそこそ時間”に迫るにゃ。
主は毎日、決まった時間になると冷蔵庫の前に立つ。
そして、まるで誰かに見られてはいけないかのように、音を立てずに扉を開け、
中からなにやら小さな包みを取り出すのだにゃ。
――そう、おやつ、である。
どうしてそんなに隠す必要があるのか、吾輩には理解できぬ。
だって、おやつとは楽しく、美味しくいただくべきものではないのかにゃ?
吾輩のちゅ〜るタイムなど、堂々たる儀式のようなもの。
主は「はいはい、キキたん、お待たせ〜♡」などと猫なで声で出してくるのにゃ。
それが、自分のおやつとなると「今しかない」みたいな顔で、
こっそり包みを開け、たまにパッケージごと寝室に持ち込んで隠れて食べるのだにゃ。
この差は一体、何にゃ……?
ある日、吾輩はクッションの隙間から、チョコレートの袋を発見した。
おお、これが例のおやつにゃ!と思った瞬間――
「ダメ!これは猫には危ないの!」と主が声を上げた。
なるほど、これは吾輩には“禁断の実”らしいにゃ。
カカオという成分が、猫にとって毒になるらしい。
……なんとも残念なおやつだにゃ。
しかしそれにしても、ヒトは“誰にも見られずにおやつを食べる”ことに
妙な満足感を得ているように見えるにゃ。
「内緒だよ」「これはごほうび」などと自分に言い聞かせて、
ひとり静かに甘味をかみしめるのだ。
もしかして、ヒトにとってのおやつとは、
味そのものより「自由時間」の象徴なのかにゃ。
考えてみれば、吾輩だってそうにゃ。
誰にもジャマされず、日向ぼっこをしながら
ちゅ〜るをぺろぺろするのは格別のひとときにゃ。
きっとヒトも、忙しい毎日の中で
“自分だけの甘やかな時間”を味わっておるのだろうにゃ。
でも主よ――
そんなにこそこそせずとも、堂々と食べればいいにゃ。
そして、できればひとくち分けてほしいにゃ(チョコ以外で)。
せめて、袋を開けるときに「シャカッ」と音を立ててくれれば、
吾輩もその喜びを分かち合えるのだにゃ。
🐾 まとめ:おやつとは、ひとりじめしたくなるごほうびにゃ
- ヒトのおやつは、味だけでなく「静かな自由時間」を楽しんでいるにゃ。
- 吾輩のおやつは堂々タイム、ヒトのおやつは“こそこそタイム”にゃ。
- けれどどちらも、自分を癒すたいせつな“ひとくち”であるにゃ。